「いい医療をしていれば伝わる」は、半分しか正しくない
診療の質に自信を持っておられる先生ほど、こう感じていらっしゃるかもしれません。きちんとした医療を提供していれば、患者さんは自然と分かってくれるはずだ、と。それは半分は正しいのですが、半分は今の時代に合わなくなっています。なぜなら、患者さんが「どこにかかるか」を決める段階では、まだ先生の医療を一度も受けていないからです。
初めて受診する患者さんは、診療の中身を体験する前に医院を選んでいます。では何を頼りに選んでいるのか。そこを知ることが、選ばれる医院になるための出発点になります。
患者さんは「人の声」で選んでいる
国が3年ごとに行っている受療行動調査は、患者さんが医療機関をどう選んでいるかを知る、数少ない全国規模のデータです。最新の令和2年調査を見ると、その傾向がはっきり表れています。
外来患者全体の調査では、ふだん医療機関にかかるときに情報を入手している人が8割にのぼります[1]。そして、その人たちが何を情報源にしているかというと、最も多いのが「家族・友人・知人の口コミ」で、71.1%が挙げています[1]。次いで多いのが「医療機関が発信するインターネットの情報」で23.5%、さらにSNSや電子掲示板、ブログなどを含む「医療機関・行政機関以外が発信するインターネットの情報」も14.0%を占めています[1]。
ここから見えてくるのは、患者さんが医院を選ぶとき、自分以外の誰かの体験を強く頼りにしているという事実です。家族や知人が語る「あそこは良かった」「あの先生は話をよく聞いてくれる」という生の声。あるいはインターネット上に残された、見知らぬ誰かの体験談。これらが、まだその医院を知らない患者さんの判断を左右しています。
「受けた人の評価」が次の患者さんを連れてくる
口コミにせよネット上の情報にせよ、その中身は突き詰めれば一つです。すでにその医院を受診した人が、自分の体験をどう評価したか。
つまり、新しい患者さんが来院するかどうかは、過去の患者さんがどれだけ満足したかに、かなりの部分が左右されているということです。満足した患者さんは、家族や知人に勧めてくれます。逆に不満を持った患者さんの声も、同じ経路を通って広がっていきます。診療の質そのものももちろん大切ですが、それと並んで「受診した人がどう感じ、どう語ったか」が、医院の評判を形づくっているのです。
しかも、こうした評価はかつてのように口伝えだけにとどまりません。インターネット上に書き込まれた評価は、文字となって残り、検索すれば誰でも目にできる状態で蓄積されていきます。患者さんの体験は、その場かぎりの感想ではなく、次の患者さんへと受け継がれる「情報」になっているのです。
だから、自院の患者さんの「評価」を知ることから
ここまでをまとめると、こうなります。患者さんは人の声で医院を選び、その声は過去の患者さんの評価から生まれている。であれば、選ばれる医院をめざすうえで最初に向き合うべきは、自院の患者さんが今どう感じているのか、という一点です。
評判は、コントロールできない外部の出来事のように見えて、その源泉は日々の診療の中にあります。次の記事では、この「患者さんの評価」と医院経営との関係を、もう一歩踏み込んで考えていきます。
出典
[1] 厚生労働省「令和2年(2020年)受療行動調査(概数)の概況」2021年。数値は外来患者について、「ふだん医療機関にかかる時の情報の入手先」(複数回答)による。


