調査結果は、健康診断のようなもの
直すべき領域が決まりました。では、さっそくそのスコアを上げにいきましょう——と言いたいところですが、ここで一度立ち止まってみてください。低いスコアを、そのまま数字として追いかけるやり方には、落とし穴があります。
患者満足度の調査結果は、先生方が日々向き合っておられる健康診断の数値に、少し似ているかもしれません。検査値が基準を外れていれば、その奥にある原因を探られるのと同じで、低い満足度スコアも、患者さんの体験のどこかに原因があることを知らせるサインとして読めます。
数値の改善は、本当の成果ではない
健康診断で血圧が高いと出たとき、治療の本当のゴールは、検査票の数値を基準内に収めることそのものではないと思います。高血圧の背景には、塩分の摂りすぎや運動不足、ストレス、あるいは別の病気が隠れているかもしれない。向き合うべきはその原因であり、数値はあくまで体の状態を映す指標にすぎず、数字だけを取り繕っても、体が健康になったことにはならないということはご存知の通りかと思います。
満足度スコアも同じです。本当の成果は、スコアという数字が上がることではなく、その向こうにいる患者さんの体験が実際に良くなることです。「待ち時間の満足度が低い」と出たときに、数字を上げること自体を目的にすると、表面的な対処に走りがちになり、患者さんが本当に困っていることを見落としてしまいます。目指すべきは数値の改善ではなく、その数値を生んでいる体験そのものの改善です。
原因は、現場ごとに違う
ここで厄介なのは、同じ「低いスコア」でも、その原因は医院ごとにまるで違うということです。
たとえば「待ち時間」のスコアが低いとして、その原因は一つではありません。予約の仕組みがうまく機能していないのかもしれないし、院内の動線が悪くて患者さんが滞留しているのかもしれない。あるいは、待ち時間そのものより、「あとどれくらい待つのか分からない」という不安が、不満の正体かもしれません。実際に、待ち時間の長さよりも、見通しが立たないことのほうが患者さんのストレスになっている、という指摘もあります。
同じスコアでも原因が違えば、打つ手も変わります。だからこそ、「低いスコア=この対策」と短絡せず、自院では何が起きているのかを、一度丁寧に確かめる必要があります。
原因を探るための手がかり
原因を探るといっても、いきなり大がかりな調査をする必要はありません。すでに手元にある材料から、いくつもの手がかりが得られます。
一つは、これまで触れてきた自由記述です。患者さんが具体的にどんな場面で不満を感じたのかが、言葉として残っていることがあります。もう一つは、設問を細かく分けて聞いていた場合、その内訳です。「医師の応対」の中でも、説明なのか、態度なのか、どこが沈んでいるのかが見えれば、原因の見当がつきやすくなります。そして何より、現場のスタッフの声です。日々患者さんと接している受付や看護師は、数字に表れない実感を持っていることが少なくありません。
ただし、これらはあくまで原因を推測するための手がかりであって、「これが原因に違いない」と決めつけるのは禁物です。手がかりから仮説を立て、小さく対策を試し、次の調査で確かめる。この慎重さが、的外れな改善に労力を費やすことを防いでくれます。
数値ではなく、患者さんを見る
低いスコアを前にしたとき、つい「この数字をどう上げるか」と考えてしまいます。しかし、本当に見るべきは、数字の向こう側にいる患者さんです。
その数字は、ある患者さんが感じた不便や不安の表れです。数字を追いかけるのではなく、その体験そのものを良くしようとすれば、スコアは結果として後からついてきます。健康診断の数値を本当に良くするには生活の側に踏み込むしかない——それは、先生方がふだん患者さんに伝えておられることと同じだろうと思います。満足度を上げるとは、小手先で数字を動かすことではなく、患者さんの体験を一つずつ良くしていく、地道な営みなのです。


