医院選びの入口が、また一つ増えた
「この症状なら、どこのクリニックに行けばいい?」。こうした問いを、検索エンジンだけでなく、ChatGPTのような生成AIに投げかける患者さんも現れ始めているようです。どの程度広がっているかを示す確かな数字があるわけではありませんが、AIは会話形式で、まるで知人に相談するように「この地域なら、こういう医院が良さそうです」と答えを返すことがあります。
Googleの検索結果や地図の星評価が医院選びに影響することは、もう先生方もよくご存じの通りです。そこに加えて、AIが医院を「推薦」する経路が新たに生まれつつある。これ自体は、患者さんの情報収集の手段が増えたというだけの、自然な変化です。問題は、そのAIが何をもとに医院を推薦しているのか、という点にあります。
AIは「ネット上の評判」を要約しているだけ
ここを誤解しないことが大切です。生成AIは、それぞれの医院を実際に受診して品質を確かめているわけではありません。AIが行っているのは、多くの場合、インターネット上に存在する情報を幅広く集めて、それらを要約することです。
その情報源には、Googleのレビューや口コミサイト、比較サイト、掲示板、各種のコラム記事などが含まれます。AIはこうした複数の情報を横断して、ネット上に漂う評判の全体的な傾向を読み取り、一つの推薦という形にまとめあげます。つまりAIの推薦の土台にあるのは、結局のところ、これまでと同じネット上の口コミや評価なのです。
元の評価が歪んでいれば、AIの答えも歪む
ここに見落としてはいけない問題があります。AIが参照しているネット上の評価そのものが、必ずしも医院の実態を正しく映しているとは限らない、という点です。
たとえばGoogleレビューを見ると、口コミを書くのは受診した患者さんのごく一部にすぎません。しかも、強い不満を持った人か、よほど感激した人か、感情が大きく動いた人ほど書き込む傾向があり、評価が極端に振れやすいことが知られています。この点は、後の記事で詳しく扱います。要するに、ネット上の評価には初めから偏りが含まれているということです。
AIは、その偏りを含んだ情報を集めて要約します。問題は、AIの答えが滑らかで、いかにも中立的な結論のように見えてしまうことです。元になったデータがどれだけ偏っていても、AIは一つのもっともらしい推薦として提示します。歪みが見えにくくなる分、かえって厄介とも言えます。患者さんは、その推薦を「客観的な評価」だと受け取ってしまうかもしれません。
外部の評価に振り回されないために
ここまでをまとめると、AIによる医院選びという新しい流れも、突き詰めればGoogleレビューと同じ問題に行き着きます。集患に影響することは事実だが、その土台にある評価は、自院の実態を正確に映したものではない。そして、その評価を医院の側からコントロールすることはできません。
であれば、外部に現れる評価に一喜一憂するのではなく、自院の患者さんが実際にどう感じているのかを、自分の手で正確につかむことが重要になります。ネット上の評判やAIの推薦が、断片的で偏った声から作られているのに対して、きちんと設計された患者満足度調査は、自院を訪れた患者さんの本当の声を、偏りを抑えて知るための手段です。
外部の評価が複雑になっていくほど、足元の確かなデータを持っていることの価値は高まります。次の記事からは、その患者満足度が経営にどう効いてくるのかを、具体的に見ていきます。


