患者は、もう「待っていれば来る」存在ではない
開業されている先生方なら、肌で感じていらっしゃると思います。良い医療さえ提供していれば自然に患者さんが集まる、という時代ではなくなりました。患者さんは家族や知人の口コミを参考にしたり、スマートフォンで近くの医院を調べたりしながら、「どこにかかるか」を自分で選んでいます。国の受療行動調査でも、医療機関を選ぶときの情報源は「家族・知人・友人の口コミ」が最も多く、次いでインターネット上の情報となっています[1]。
患者さんに選ばれるかどうかを左右するのは、過去にその医院を訪れた人たちの評価です。そしてその評価の根っこにあるのが、患者満足度です。
患者満足度とは何を指すのか
患者満足度とは、患者さんが自分の受けた医療を総合的にどう評価したか、その手応えのことです。「あの医院は良かった」と感じてもらえるかどうか、と言い換えてもいいでしょう。
医療の質を評価する考え方は患者満足度の他にもいくつかあり、たとえば「診察で実際に何が行われたか」を事実として細かく記録していく患者経験価値(PX)というアプローチもあります。臨床的な質をきめ細かく見るには有効な見方です。
当サイトは扱うテーマをクリニック経営、特にマーケティング観点に定めているので患者満足度にフォーカスします。経営という観点では、患者さんの総合的な評価、すなわち満足度こそが、最も素直に効いてきます。人がもう一度その医院を選ぶか、誰かに勧めるかを決めるのは、結局のところ「良かった」という全体的な印象だからです。
医療の質を論じた古典的な研究でも、満足度は「患者の価値観や期待に医療者が応えられたかを示すものであり、医療の質の評価として根本的に重要だ」と位置づけられてきました[2]。
満足度が「また来てくれる」を生む
ここからが、経営にとって本質的な話です。
サービス業の世界には、長く検証されてきた一つの流れがあります。提供するサービスの質が顧客の満足を生み、その満足が「また使いたい」「人に勧めたい」という愛着(ロイヤルティ)につながり、それが事業の成長を支える、という流れです。医療もこれと同じです。
医院に当てはめると、こうなります。医師の説明や接し方、待ち時間、受付の対応。こうした一つひとつが患者さんの満足度をつくり、その満足度が「次もここに来よう」「家族にも勧めよう」という気持ちを生みます。再診や口コミによる紹介は、新しい患者さんの来院、つまり集患につながっていきます。国内のプライマリケアを対象とした研究でも、「同じ医師にまたかかりたい」「人に勧めたい」という患者さんのロイヤルティが、医療の質と並ぶ重要な指標として注目されています[3]。古くから、満足度の高い患者さんほど再診率や紹介率が高まることも指摘されてきました[2]。
逆に、満足度の低さは静かに患者さんを遠ざけます。米国でかかりつけ医を変えた患者を追跡した研究では、医師との関係が最も良くないと感じた患者さんは、関係が良好だと感じた患者さんに比べ、自らその医師のもとを離れる割合が高いことが示されています[4]。不満は口に出されないまま、「来なくなる」という行動で表れるのです。
だから、満足度を「測る」ことから始まる
ここまでお読みになって、「自院の患者さんは、実際どう感じているのだろう」と思われたなら、それがこのサイトの出発点です。
何か新しい施策を打つ前に、まず自院の患者満足度が今どうなっているのかを知る。満足度は感覚ではなく、きちんと測れる指標です。そして測れるものは、改善できます。当サイトでは、なぜ満足度が集患や経営に効くのかというエビデンスから、実際の測り方、結果の活かし方まで、順を追ってお伝えしていきます。
出典
[1] 厚生労働省「平成29年受療行動調査(確定数)の概況」2019年
[2] Donabedian A. Explorations in Quality Assessment and Monitoring, Vol. 1: The Definition of Quality and Approaches to Its Assessment. Ann Arbor, Michigan: Health Administration Press, 1980
[3] Kijima T, Matsushita A, Akai K, et al. Patient satisfaction and loyalty in Japanese primary care: a cross-sectional study. BMC Health Services Research 2021;21:274
[4] Safran DG, Montgomery JE, Chang H, Murphy J, Rogers WH. Switching doctors: predictors of voluntary disenrollment from a primary physician’s practice. J Fam Pract 2001;50(2):130-136


