満足度を上げたい、でもどこから?
患者満足度が経営に効くと分かっても、次に出てくるのは「では、何をどう良くすればいいのか」という問いです。診療の腕を磨く、設備を新しくする、待ち時間を減らす、スタッフの応対を改善する。手をつけられることはいくつもありますが、限られた時間と費用の中で、どこに力を注ぐのが最も効くのでしょうか。
幸い、この問いには複数の研究が共通した答えを出しています。患者さんの満足度を最も強く左右しているのは、医師自身の患者さんへの応対です。
最も効くのは「医師の応対」
外来患者さんの満足度が何で決まるかを調べた国内の研究は、いくつもあります。複数の医療機関の外来患者を対象に、医師・看護師・事務職員・設備環境などへの評価と総合的な満足度の関係を分析した研究では、医院の規模や機能を問わず、医師への評価、設備・環境への評価、健康が回復した実感の三つが満足度に影響していました。そして、その中でも医師への評価の影響力が最も大きいことが、はっきりと示されています[1]。
別の研究でも、外来患者さんの満足度は医師の応対への評価と最も強く結びついていました[2]。理由を考えれば腑に落ちます。外来の患者さんは、医師の診察を受けることを目的に来院します。来院中に最も深く関わるのが医師である以上、その医師との関わりがどうだったかが、満足度の中心を占めるのは自然なことです。
ここで言う「医師への評価」とは、必ずしも高度な診断技術や治療の腕前だけを指すのではありません。むしろ大きいのは、患者さんへの接し方です。話をきちんと聞いてくれたか、分かりやすく説明してくれたか、ぞんざいに扱われなかったか。患者さんは医学的な正しさを直接判断するのは難しいぶん、こうした「どう接してもらえたか」を通じて医師を、そして医院全体を評価しています。
医師だけでは、満足は完結しない
ここで一つ、誤解を避けておきたい点があります。医師の応対が最も重要だということは、医師さえ頑張ればよい、という意味ではありません。
最近の国内の研究で、興味深い結果が出ています。ある地域の医療機関で、医師以外のスタッフへの満足が全体満足度とどう関係するかを分析したところ、看護スタッフの応対のよさや、待ち時間への配慮、受付スタッフの応対も、それぞれ独立して全体満足度の高さと結びついていました[3]。とりわけ看護スタッフの応対や待ち時間への配慮の影響は、無視できない大きさで現れています。
これは、医師が満足度の中心にいるという話と矛盾しません。患者さんは来院してから帰るまで、受付で迎えられ、看護スタッフに対応され、待ち時間を過ごし、医師の診察を受け、また会計に戻ります。この一連の流れのどこかで強い不満が生まれれば、たとえ医師の診察が良くても、全体の印象は損なわれます。医師の応対が満足度の柱であることは間違いありませんが、その柱を支える土台として、スタッフ全員の対応があるのです。
「自院ではどうか」を知るために
ここまでをまとめると、患者満足度を高める出発点は、まず医師の応対、とりわけ患者さんへの接し方にあります。そして、それを看護・受付を含むスタッフ全体の対応と待ち時間への配慮が支えます。優先順位としては、医師の応対が中心にあると考えてよいでしょう。
ただし、これらはあくまで多くの医療機関を平均した傾向です。先生の医院で、患者さんが実際にどこに満足し、どこに不満を感じているかは、医院ごとに違います。たとえばある研究では、新館を開院した病院では設備・環境への評価が満足度の最大の要因になっていたように、その医院固有の事情で重みは変わります[1]。
だからこそ、一般論を知ったうえで、自院の患者さんが何を見て満足しているのかを実際に測ることが必要になります。次の記事からは、いよいよその「測り方」に話を進めていきます。
出典
[1] 山本武志、伊藤弘人、中野夕香里、他「外来患者の患者満足度に関する研究:医療機関の規模・機能による差について」医療情報学 2004;24(2):297-304
[2] 早瀬良、坂田桐子、高口央「患者満足度を規定する要因の検討——医療従事者の職種間協力に着目して」実験社会心理学研究 2013;52(2):104-115
[3] Morikawa K, Ando T, Tezen S, Okada T. Non-Physician Contributors to Patient Satisfaction in a Japanese Primary Care: A Cross-Sectional Secondary Analysis of Patient Satisfaction Surveys. Journal of General and Family Medicine 2025;26:612-619


