vol.7 Googleの星評価と、患者満足度は別物である


星の数を、自院の通信簿だと思っていないか

自院のGoogleの評価が気になって、つい星の数を確認してしまう。低い評価がつくと一日気分が沈む。そういう先生は少なくないと思います。星評価が集患に影響することはこれまで見てきた通りで、気にすること自体は自然です。

ただ、ここで立ち止まって考えたいことがあります。あの星の数は、本当に自院の実力を映した通信簿なのでしょうか。結論から言えば、Googleの星評価と、患者さんが本当はどう感じているかを示す患者満足度とは、別物です。星に一喜一憂する前に、なぜ別物なのかを知っておくことが、外部の評価に振り回されないための備えになります。

書いているのは、ごく一部の患者さんだけ

静岡県の二千を超える医療機関に寄せられたGoogleレビューを分析した研究があります。この研究は、星評価がどういう性質を持っているかを具体的に明らかにしました[1]。

まず、レビューを書いているのは受診した患者さんのごく一部です。当たり前のようですが、ここが決定的に重要です。診察に満足した大多数の患者さんは、わざわざレビューを書いたりしません。書くのは、期待を超える対応に感激した人か、強い不満を持った人か——いずれにせよ、感情が大きく動いた一部の患者さんです[1]。

その結果、評点の分布は特徴的な形になります。この研究では、最高評価の星5と最低評価の星1が突出して多く、真ん中の評価は少ないという、両極に振れた分布が見られました[1]。普通に満足した、という穏やかな評価は、そもそも書き込まれにくいのです。つまりGoogleの星評価は、患者さん全体の平均的な感想ではなく、感情が振り切れた両端の声を拾い上げたものだということです。

「真の評価」を知るのは難しい

この研究は、自らの限界として、さらに踏み込んだことを述べています。レビューは任意で書き込まれたもので受診患者全体の意見を反映していないため、患者満足度の評価そのものには用いることができない、と研究者自身が明言しているのです[1]。加えて、なりすましやサクラの投稿の可能性も否定できず、レビューから医療機関の本当の評価を知ることは難しいとしています[1]。

これは重い指摘です。患者満足度を測るために設計された調査と違い、Googleレビューはそもそも医院を正しく評価するための仕組みとして作られていません。誰が、どんな状況で、どんな感情で書いたのか分からない少数の声が、あたかも医院全体の評価であるかのように表示されている。それが星評価の実態です。

では、星評価は無視していいのか

ここまで読むと、「ならばGoogleなど気にしなくていい」と思われるかもしれません。しかし、そう単純でもありません。

同じ研究は、Googleの星評価が患者さんの受診行動に少なからず影響を与えうることも認めています[1]。実態を正しく映していなくても、検索した患者さんの目に入り、医院選びを左右してしまう。ここに、星評価のやっかいさがあります。正確ではないのに、影響力はある。だから、無視はできないが、真に受けてもいけない。これが、星評価との適切な距離感です。

なお、星評価を動かしている要素についても、この研究は手がかりを与えてくれます。評点に最も影響していたのは医師の応対であり、とりわけ患者さんへの接遇・態度に関する内容が多くを占めていました[1]。前の記事で見た「医師の応対が満足度の中心」という知見と、方向性は一致しています。日々の診療で患者さんへの接し方を大切にすることは、結果として星評価にも良い影響を及ぼしうる、ということです。ただし、その具体的な向き合い方は、後の記事で改めて取り上げます。

振り回されないために、自分の物差しを持つ

整理すると、Googleの星評価は、感情が振れた一部の患者さんの声であり、なりすましの可能性もあり、自院の実態を正確には映していません。それでいて集患には影響する。この厄介な存在に振り回されないために必要なのは、外部の不確かな評価とは別に、自院の患者さんが本当はどう感じているのかを示す、確かな物差しを自分で持つことです。

その物差しこそが、きちんと設計された患者満足度調査です。一部の感情的な声ではなく、来院した患者さんから偏りを抑えて広く集めた声は、星評価が決して教えてくれない自院の本当の姿を映します。次の記事からは、いよいよその患者満足度を「どう測るか」に話を進めます。


出典

[1] 竹久和志、本田真也、日比隆太郎、他「医療機関のGoogleレビューにおける評点とクチコミ評価項目の分析:観察研究」日本プライマリ・ケア連合学会誌 2023;46(1):2-11

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